「アーバン山水」展覧会公式カタログ
リサーチ、作品図版、展覧会インスタレーションビューなどの記録に加え、近藤亮介(キュレーター)と石川初(ランドスケープ・アーキテクト/慶應義塾大学教授)による書き下ろし論考、kudan house解説を収録。
サイズ:A4・B5・A5(3分冊)
仕 様:中綴じ、全100頁
言 語:日本語・英語(2ヶ国語併記)
発行年:2023年12月
発行元:山水東京
価 格:¥ 2,500(消費税・送料込)
「アーバン山水」展覧会公式カタログ
山水東京は、東アジア特有の思想である山水をテーマに、現代の芸術と社会について考えるコレクティブです。山水は、山水画や枯山水に象徴されるように古典的な主題と思われがちですが、根底にある人間の非主体性は、現代に生きる私たちに多くの示唆を与えてくれます。
山水東京を主宰する近藤亮介は、これまで欧米のランドスケープ史を研究する傍ら、中国風水術や日本庭園のフィールドワークを通して、東アジア在来の自然の捉え方に関心を持ってきました。西洋の「ランドスケープ=風景」が人間(主体)と自然(客体)を二項対立で捉えるのに対して、東洋の「山水」は万物の流転の中に人間も自然も主客未分化なまま存在すると考えます。
そのような自然・風景の枠に収まらない山水の視点は、西洋近代的な価値観が行き詰まりを見せる現代社会にも有効だと思われます。山水東京は、ユニークな方法で山水の世界観を探究しながら、芸術と社会の新たな関係を構築したいと考えています。
山水东京是以东亚特有的思想—山水为主题,探究现代艺术与社会关系的群体。提到山水,很容易联想到象征古典主题的山水画和枯山水。然而,山水中根本蕴含的人间非主体性为生活在现代社会的我们提供了众多的启示。
山水东京由近藤亮介领衔。近藤亮介在研究欧美风景史的同时,通过对中国风水术以及日本庭园的实地考察,引发了对东亚固有自然观的关注。相对于西洋“风景”中人为主体,自然为客体,二者相互对立的认识,东洋“山水”中人与自然主客不分,均存在于万物流转之间。
这种无法容纳在自然·风景框架中的山水视角,有效地诠释了西洋近代价值观走向穷途末路所呈现的现代社会。山水东京以其独特的方法,试图在探究山水世界观的同时构建艺术与社会的新的关系。
2023年12月20日(水)、21日(木)、22日(金)13時-21時(入館は19:30まで) 会期中無休
アーティスト:石井友人/片山初音/カニエ・ナハ/高嶋晋一+中川周/藤倉麻子/槙原泰介/丸山直文/水木塁/三宅砂織
トークゲスト:石川初(ランドスケープ・アーキテクト)/大巻伸嗣(現代美術作家)/小金沢智(キュレーター)
企画:近藤亮介
主催:山水東京
協力:kudan house
2023年3月にkudan houseで開催した「アーバン山水」展は、前近代の山水をただ復興させるのではなく、現代の視座から更新することを試みました。伝統的な中国の画家は険しい山崖や肥沃な平原といった大陸の地質から想を得ましたが、「アーバン山水」展に参加したアーティスト達は建物とインフラで覆われた都市の表層を凝視し、地層より手前にある身近な事物へと想像力を巡らせました。
今回の複合イベント「アーバン山水β」では、「アーバン山水」展で孵化した都市生活者の新たな想像力が、個人としてコレクティブとして内省された上で、発展的に展開されます。山水東京を主宰する近藤亮介は「アーバン山水」という概念を深化させる論考を書下ろし、展覧会記録とともに「アーバン山水」展公式カタログとして出版します。また、展示では「アーバン山水」展に参加したアーティストの石井友人・藤倉麻子・槙原泰介・水木塁に加えて、詩人のカニエ・ナハ、山水東京の最初の展覧会「それぞれの山水」に参加した高嶋晋一+中川周、継続的にフィールドワークやミーティングに参加してきたアーティストの片山初音・丸山直文・三宅砂織が参加し、より広域に山水の世界観を探求します。さらに、ランドスケープ・アーキテクトの石川初氏、アーティストの大巻伸嗣氏、キュレーターの小金沢智氏をゲストに迎え、トーク・イベントを毎夜開催します。
2023年3月10日(金)- 19日(日)11時-18時(入館は17時まで) 会期中無休
石井友人 / 藤倉麻子 / 槙原泰介 / 水木塁
企画・キュレーション:近藤亮介
調査・地図:齋藤直紀
アシスタント:黄夢圓
主催:山水東京
協力:kudan house
技術協力:YOKOITO Additive Manufacturing
助成:公益財団法人小笠原敏晶記念財団/公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京/公益財団法人野村財団
会場:kudan house
かつて山水画や枯山水の着想源となった山水は、20世紀初頭まで日本人の生活文化に広く根ざした世界観でした。そこでは、人間と自然が分離されることなく、万物の流転の中に主客未分のまま存在すると考えられています。西洋近代的な価値観が行き詰まり、「コモン」や「ケア」といった概念が注目される今、山水の思想は現代の生活・社会を見つめ直すためのヒントに満ちているように思われます。
本展は、前近代(プレモダン)の山水をただ復興させるのではなく、現代の視座から更新することを試みます。伝統的な中国の画家は険しい山崖や肥沃な平原といった大陸の地質から想を得ましたが、本展のアーティストは建物とインフラで覆われた都市をフィールドに活動しています。都市で世界との関係を結び直すためには、都市の表層を凝視し、地層より手前にある身近な事物へいかに想像力を巡らせるかが鍵となるでしょう。奇しくも新型コロナウイルスの流行は、私たちに日々の生活と丁寧に向き合い、見えない他者を想像することの大切さを気づかせました。まさしく今日の社会に求められる都市生活者の想像力――それが「アーバン山水」です。
kudan houseは、1927年の創建時から物語を紡いできた歴史的建造物を受け継ぎ、現代における場の価値を再編集するという考えのもと運営を行っています。kudan houseを象徴する洋館のスパニッシュ様式や耐震壁構造、庭の実用的な構成は、日々の暮らしを大切にしてきた人々の思いを今に伝えており、身近な事物への想像力を問う本展のコンセプトにも通じています。 本展は、現代アーティストによる作品と戦前から愛用されてきた家具、重厚な洋館とモダンな庭、プライベートな敷地とパブリックな都市空間をシームレスにつないでみせることによって、主客の境界をぼかし、鑑賞者を山水の世界へ誘います。
2020年2月15日(土)- 3月8日(日) 12:00-19:00 金・土・日・祝のみ開催
石井友人 / 高嶋晋一 + 中川周 / 槙原泰介 / 水木塁
企画 : 近藤亮介(美術批評家)
会場:駒込倉庫
この度、駒込倉庫にて4組の作家によるグループ展「それぞれの山水」を開催いたします。
本展を企画した近藤亮介は、これまで欧米のランドスケープ史を研究する傍ら、中国風水術や日本庭園のフィールドワークを通して、東アジアに根差した自然の捉え方に関心を持ってきました。西洋由来の「ランドスケープ=風景」は、人間(主体)の存在を前提としているのに対して、中国発祥の「山水」には人間の所在がはっきり認められません。それは、山と水が目に映ずる世界というより、むしろ万物の両極性――陽と陰、静と動、有形と無形など――の象徴であり、すべての連鎖の中に人間も自然も主客未分化なまま存在すると考えられているからです。
そのような山水の視点は、東アジアの自然観に留まらず、グローバル化の進む芸術や社会を考える上でも示唆に富んでいます。例えば、近代の芸術モデルが主従関係と見なしてきたオリジナルと複製は、相補関係として再解釈されるでしょう。また、人工知能やバイオ技術が揺るがす人間の主体性は、そもそも所与のものではないかもしれません。つまり山水は、単なる西洋近代批判やナショナリズムの方便ではなく、近未来を思考するための開かれたキーワードとなり得るのではないでしょうか。
本展に参加する4組の作家は、表現手段も関心もさまざまですが、日常にありふれたものを直観し、素材=物質との身体的な関係を通して、自らを他律的思考へ投げ入れる点で共通します。彼らがそれぞれの方法で喚起する世界は、思考に先行して物質・行為が存在し、人と自然が混淆する「トポス=場所」としての山水といえるかもしれません。本展は、そうした山水の潜在的可能性を提示します。また、会期中には多彩なゲストを招き、本展の魅力を掘り下げるギャラリートークも開催いたします。ぜひご高覧ください。
2023.03.18
2023.03.18